【ステンレス鋼の分類】
分類 | 化学組成 | 例 | 磁性 | 焼入性 |
加工 硬化性 |
|||
Cr系 | フェライト系 |
低C (0.1%以下) 11.5~30% Cr |
SUS430 |
有 | 無 | 無 | ||
マルテンサイト系 |
高C (Max.0.75%) 11.5~18%Cr |
SUS410 SUS420J2 |
有 | 有 | 無 | |||
Ni-Cr 系 | オーステナイト系 |
16~26%Cr 6~25%Ni |
SUS304 SUS316 |
無 | 無 | 有 | ||
オーステナイト・ フェライト系 |
21~28%Cr 3~7.5%Ni |
SUS329J1 SUS329J4L |
有 | 無 | 無 | |||
析出硬化 型 |
オーステ ナイト系 |
16~18%Cr 3~7.5%Ni |
SUS631 | 有 | 無 | 有 | ||
マルテン サイト系 |
15~18%Cr 3~5%Ni |
SUS630 | 有 | 有 | 無 |
フェライト系(SUS403)
代表的な鋼種として18Cr(俗に言う18クロムステンレス)と呼ばれるSUS430がある。一般にはマルテンサイトよりクロムの含有比率が高い鋼種である。耐食性はオーステナイトよりは劣るが、マルテンサイトよりは高い。溶接性もそこそこありまた軟質で延性に富んだ材料でもある。
マルテンサイト系(SUS420J2)
マルテンサイトの最大の特徴は、他の鉄鋼材料のように熱処理(焼入れ)をすることができ、この焼入れによってマルテンサイト組織が生じて硬化させることができる。マルテンサイトの組織自体は、硬くて脆い性質をもつが、焼き戻しによって強度や硬さをさらにあげることができる。この系統のステンレスは組織が変態するという特色があるため、熱処理によって硬化させて利用されている。代表的な鋼種として、13Crステンレス(13クロムステンレス)がある。
オーステナイト系(SUS304)
代表鋼種には18-8ステンレス(18Cr-8Ni)ともいわれるSUS304がある。500~800℃に加熱すると結晶粒界にクロム炭化物が析出してくるという欠点があり、粒界腐食(金属組織を構成する粒と粒の境界線から腐食していく)の原因となる。これを防ぐために、炭素量を減らしたり、チタンやニオブなどの安定化元素を添加して、クロムの代わりにこれらの物質と炭素を結び付けてクロム炭化物の生成を抑える方法がある。Niを含有しているので、常温でもオーステナイトの組織が安定している材料で、またCrとNiの含有量が多いことから、耐食性、耐熱性に優れます。低温じん性にも優れます。応力腐食割れ感受性が高いという欠点については、添加元素により改良されている鋼種もある。
オーステナイト・フェライト系(SUS329J4L)
二相系ステンレス鋼と呼ばれ、オーステナイト組織とフェライト組織が共存しており高強度で耐食性に優れ、耐応力腐食割れ性、耐孔食性、耐隙間腐食性を有する。
詳細は、次頁『二相系ステンレス鋼及び高ニッケル合金』
を参照下さい。
析出硬化系(SUS630)
熱処理によって高硬度にしたステンレスである。元来、焼入によって硬化できないオーステナイト系ステンレス鋼材を熱処理によって強力化できるように改良した鋼種であるので、クロムニッケル系の組成を持っている。このため、耐食性はオーステナイト系には及ばないが、クロム系よりは優れている。固溶化熱処理(S処理)によって成形加工して析出熱処理を施した鋼種で、金属組織上の特徴から3タイプある。