防爆構造
電気機械器具防爆構造とは
工場及び事業所において、プロパン、ガソリン、シンナー、水素等の爆発性ガスの雰囲気中で電気機器を使用して作業を行う場合、一般の電気機器を使用すると、電気機器が発生する電気火花、熱により
引火し爆発する危険性がある。このような危険な場所でも安全に取扱作業ができるように設計し、かつ厚生労働省へ登録された「防爆構造電気機械器具の登録検定機関」により、「電気機械器具防爆構造規格」または「工場電気設備防爆指針(国際整合防爆指針)」に基づく型式検定に合格・認定された電気機械器具。
主要な規定及び技術指針
・電気機械器具防爆構造規格(昭和44年労働省告示第16号)及び昭和四十七年労働省告示第七十七号
の一部を改正する告示(平成20年厚生労働省告示第88号)
以降、構造規格と称する
・ISSN 1882-2703(平成20年12月1日)労働安全衛生総合研究所技術指針
工場電気設備防爆指針(国際規格に整合した技術指針2008)
以降、技術指針と称する
危険度区域の分類 :技術指針による
危険度0区域(Zone0) (特別危険箇所) |
ガス、蒸気又はミスト状の可燃性物質と空気との混合物質で構成する
爆発性雰囲気が連続的に、長時間又は頻繁に存在する区域 |
危険度1区域(Zone1) (第1類危険箇所) |
ガス、蒸気又はミスト状の可燃性物質と空気との混合物質で構成する 爆発性雰囲気が通常運転中でもときどき生成する可能性がある区域 |
危険度2区域(Zone2) (第2類危険箇所) |
ガス、蒸気又はミスト状の可燃性物質と空気との混合物質で構成する
爆発性雰囲気が通常運転中に生成する可能性がなく、生成しても短時間 しか持続しない区域 |
防爆構造の種類 : 技術指針による
耐圧防爆構造 記号(d) |
爆発性ガス雰囲気を発火させうる電気部品を内部に有するが、内部の 爆発性ガスの爆発によって生じる圧力に耐え、かつ、容器を取巻く周囲 の爆発性ガス 雰囲気への爆発を防止する構造 |
内圧防爆構造 記号(p) 構造規格記号(f) |
内圧容器の内部に保護ガスを送入し、又は封入することにより内部の 圧力を外部圧力より高くし、内圧容器の内部に爆発性ガス雰囲気が侵入 しないようにした構造。 |
安全増防爆構造 記号(e) |
正常時及び事故時に発生する電気火花、又は、高温部を生じてはならな い部分に、これらが発生するのを防止するように、構造上及び温度上昇 について、特に安全度を増加した構造。 |
油入防爆構造 記号(o) |
電気火花又は、アークを発する部分を油中に収め、油面上に存在する 爆発性ガスに引火する恐れがないようにした構造 |
本質安全防爆構造 記号(i) |
正常時及び事故発生時に発生する電気火花、又は、高温部により爆発 性ガスに点火しないことが、公的機関において試験その他によって確認 された構造 |
特殊防爆構造 記号(s) |
上記以外の構造で、防爆性ガスの引火を防止できることが、公的機関 において試験その他によって確認された構造 |
樹脂充てん防爆構造
記号(m) |
電気機械器具を構成する部分であって、火花若しくはアークを発し、 又は高温となって点火源となるおそれがあるものを樹脂の中に囲むこと により、ガス又は蒸気に点火しないようにした構造。 |
非点火防爆構造 記号(n) |
正常な運転中には週囲の爆発性雰囲気を発火するおそれがなく、また、 発火を生じる故障を起こす可能性の少ない構造。 |
危険場所と防爆構造の適用例 : 技術指針による
防爆構造の名称 | 記号 |
特別 危険場所 |
第一類 危険場所 |
第二類 危険場租 |
本質安全防爆構造 | ia | 〇 | 〇 | 〇 |
ib | X | 〇 | 〇 | |
耐圧防爆構造 | d | X | 〇 | 〇 |
内圧防爆構造 | px, py | X | 〇 | 〇 |
安全増防爆構造 | e | X | 〇 | 〇 |
油入防爆構造 | o | X | 〇(注) | 〇 |
非点火防爆構造 | nA ,nC, nR, nL | X | X | 〇 |
脂充填防爆構造 | ma | 〇 | 〇 | 〇 |
mb | X | 〇 | 〇 | |
特殊防爆構造 | s | - | - | - |
(注) 保護回路の動作方法によって、第一類危険箇所には適さないものがある。 備考1. 表中の記号〇、X、- の意味は、次のとおりである。 〇印:適するもの X印:適さないもの -印:適用されている防爆原理によって適否を判断すべきもの 2. 一つの電気機器の異なる部分に別々の防爆構造が適用されている場合は、その電気機器の それぞれの部分に、該当する防爆構造の種類が記号で表示される。 3. 一つの電気機器に2種類以上の防爆構造が適用されている場合は、主体となる防爆構造の記号 が初めに表示される。 |
防爆等級 : 構造規格 (電気機器のグループ : 技術指針)
1. 最大安全すきま及び火炎逸走限界
ガス蒸気を分類するため、標準容器(接合面の奥行25mm)の中に、対象とする可燃性ガス蒸気を入れて実験的に求めるものである。爆発的雰囲気の中に設置されている電気機器の内部に、あるエネルギー以上の発火が生じたとき爆発性雰囲気が形成されていれば電気機器の内部で爆発が生じる。このときに生じる火炎が機器内部に十分に封じ込まれていれば周囲の爆発性雰囲気に爆発が波及しない。つまり、外部へ火炎が逸走することはない。実際には、電気機器にはすきまが生じているため、火炎逸走を
生じない安全なすきまの最大又は火炎逸走を生じるすきまの最小限界を知る必要がある。最大安全すきまは、ガス蒸気の種類ごとに決めることもできるが、利用しやすくするため三つのグループ(爆発等級
1, 2, 3 又は、グループⅡA, ⅡB, ⅡC)に区分されている。
2. 爆発等級:構造規格/グループ:技術基準 の分類
爆発等級 (構造規格) |
スキの奥行25mmにおいて火炎 逸走を生ずるスキの最小値 |
グループ (技術基準) |
ガス又は蒸気の最大安全すきま の範囲 |
1 | 0.6mmを超えるもの | ⅡA | 0.9mm以上 |
2 | 0.4mmを超え0.6mm以下のもの | ⅡB | 0.5~0.9mm未満 |
3 | 0.4mm以下のもの | ⅡC | 0.5mm以下 |
G : 発火度(構造規格) /T : 温度等級(技術基準)
発火度 (構造規格) |
発火温度(℃) |
温度等級 (技術基準) |
最高表面温度の範囲(℃) |
G1 | 450℃を超えるもの | T1 | 300超え~450以下 |
G2 | 300℃を超え450℃以下のもの | T2 | 200超え~300以下 |
G3 | 200℃を超え300℃以下のもの | T3 | 135超え~200以下 |
G4 | 135℃を超え200℃以下のもの | T4 | 100超え~135以下 |
G5 | 100℃を超え135℃以下のもの | T5 | 85超え~100以下 |
G6 | 85℃を超100℃以下のもの | T6 | 85以下 |
2
主な爆発性ガスの分類
・構造規格による分類
爆発等級( 1, 2, 3 )、発火度(G1, G2, G3, G4, G5 )
・技術指針による分類
グループ(ⅡA, ⅡB, ⅡC )、温度等級(T1, T2, T3, T4, T5 )
発火度/温度等級 | ||||||
G1/T1 | G2/T2 | G3/T3 | G4/T4 | G5/T5 | ||
爆 発 等 級
/ グ ル I プ
|
1/ⅡA |
アセトン アンモニア 一酸化炭素 トルエン ベンゼン メタン エタン 酢酸 |
エタノール 無水酢酸 1-ブタノール 酢酸イソベンチル |
ガソリン ヘキサン
|
アセトアルデヒド
|
|
2/ⅡB |
都市ガス |
エチレン エチレンオキシド |
エチルエーテル | |||
3/ⅡC | 水素 | アセチレン | 二硫化炭素 |
防爆構造の表示例
・構造規格よる分類
i d 2 G4
i:防爆構造の種類(本質安全防爆構造)
d:耐圧防爆構造(接触燃焼式センサ部分)
2:爆発性ガスの爆発等級(爆発等級 2)
G4:発火度(発火温度135℃を超え200℃以下)
・技術指針による分類
Ex ia d ⅡA T3
Ex:Ex防爆(IEC規格の基づく)
ia: 防爆構造の種類(0種場所で使用可能な本質安全防爆構造)
d:耐圧防爆構造(接触燃焼式センサー部分)
ⅡA:防爆電気機器のグループ(ガスまたは蒸気の分類がA)
T3:防爆電気機器の温度等級