1. バルブのPL法(Product Liability Law)/製造物責任法

a) バルブのPL法とは

 造業者は、引き渡した製造物(バルブ)の欠陥により他人の生命、身体又は財産を侵害したときは、これによって生じた損害賠償をする責めに任ずる。ただし、欠陥の存在、欠陥と損害との間との因果関係については、被害者側に証明責任がある

 

 b) バルブの欠陥とは

 1) 設計上の欠陥

 2) 製造上の欠陥

 3) 指示・警告上の欠陥(取扱説明書の不備等)

 

 c) 財産の侵害とは

 財物損壊(目に見える損害)。バルブが故障して、ラインが止まり多大な損害を与えても、財物損壊がない場合、PL法の適用は受けない

 

 d) 期間の制限

 1) 損害及び賠償義務者を知った時から3年

 2) 引き渡した時から10年

 

2. バルブの瑕疵担保責任

 a) 瑕疵とは

 あるべき品質や性能が欠如していること。(欠陥は安全に係る瑕疵)

 

  b) 瑕疵担保責任(民法570・566条)

 売買契約において、買主が売り主から目的物の引渡しを受けたものの、目的物に隠れた瑕疵があったことが判明した場合、買主は、契約の解除をすることができる。契約の解除をすることができないときは、損害賠償の請求のみをすることができる。隠れた瑕疵とは、買主が通常の注意を払っても知りえない瑕疵を指す。買主が契約解除又は損害賠償請求をするためには、買主が瑕疵のあったことを知ったときから一年以内にしなければならない。

 

 c) 瑕疵担保責任の法的性質(判例)

 1) 法定責任説

   不特定物(種類物)・・・請求の期間制限は、10年

   特定物(家、中古車、特殊仕様のバルブ)・・・請求の期間制限は、1年

 2) 契約責任説(債務不履行責任説)

   特定物、不特定物の違いを認めず・・・請求の期間制限は、1年 

 

3. バルブの保証期間

 a) 法律上の義務

 消費者基本法など消費者を保護するための法にその理念求めることはできるが、特にそのような期間を設けることは義務ではなく、製造側の任意に任されている。

 

 b) バルブメーカの保証期間(例)

 1) 保証期間

    使用後一年間、受け渡し後18か月を超えない期間

 2) 保証内容

   使用方法及び使用条件(圧力、温度、流体等)が適正であれば、製品又は、製品の故障部分を無

  償で取り換え修理を行います。

  納入製品の故障・不具合により誘発された障害の保証は、出来ません。 

 3) 保証除外事項

   自然災害等

 

4. バルブの事故検証(例):鋼製バルブの弁箱の破損

a) 流体の使用条件がバルブの使用条件を逸脱していなかったか、次の確認を行う。

 1) 流体の使用圧力ー温度がバルブの圧力ー温度基準(P-Tレイティング)を超えていないか?

 2) バルブの材質は、流体の種類に対して使用可能であるか?

 3) ウォータハンマ、スチームハンマなど過度の衝撃力は働かなったか?

 4) 疲労破壊の原因となるような過度の配管振動はなかったか?

   以上の場合には、一般には顧客責任となる。

 

b) このバルブの過去の納入実績の調査を行う。

 1) 過去の納入実績が多い場合、今回の特異要因である可能性が高い。

    2) 調達先、外注先を変えて発生した場合には、それが原因である可能性が高い。

 

c) 材料に問題が無かったかの調査(材料規格に適合しているか)を行う。

材料メーカは、鋳込ロット毎に化学成分、機械的性質の試験データを記録保管する義務が有る。試験記録(材料証明書)と製品の称号は、製品に打刻されたチャージNO.により確認することができる。)

  1)化学成分

  ① 素材メーカの材料証明書のチェック

      ② 第三者検査機関に成分分析を依頼

     2)機械的性質

  ① 素材メーカの材料証明書のチェック

  ② バルブ本体から試験片を取り出すことが可能な場合には、第三者検査機関に、強度試験を依

 3)熱処理条件 

      ①材料メーカに、熱処理チャート、その他、熱処理条件を確認する.。

      ② 組織の顕微鏡写真により規定の熱処理が行われているかある程度判断は可能。

 

 d) バルブ本体の強度確認

1)肉厚の規定

 ① ・JIS B 2071 (鋼製弁)/第一章 鋳鋼フランジ形弁には、呼び圧力10K 及び20K)、呼び径

    {50A(20K40A)300A}一般機械装置用、及び化学装置用の最少肉厚が規定されている。

    一般機械装置用は、水、水蒸気、空気など、腐食性のない流体に対して適用される。電力用弁は、

   一般機械装置用の肉厚である。化学装置用は、一般機械装置用+腐食代

        (JIS)一般機械装置用 10K = ASME B 16.34 Class150

       (JIS) 一般機械装置用 20K = ASME B 16.34 Class300

    ASME B 16.34Valves,Flanged,Threaded and Welding End)には、その他

          Class4004500の肉厚規定が有る。

        (JIS) 化学装置用 10K = JPI-7S-46 Class 150

        (JIS) 化学装置用 20K = JPI-7S-46 Class 300

   ・JPI-7S-46(鋳鋼製フランジ形及び突合せ溶接形弁)にはその他、クラス400

     ~2500の肉厚規定がありる。

  ② 一般の鋼製バルブの肉厚

     流体の種類に応じ、上記の規定の肉厚に対して、フランジ根首部コーナー部

    など応力集中部に付加肉厚を加ているか確認する。

 2)肉厚強度の確認方法

  ① 肉厚強度計算

   JIS B 8265(圧力容器の構造 ー 一般事項)に基づき、次の部位に対して計算する。

         円筒胴、鏡板、ボルト締めフランジ

  ② 破壊試験

     鋼製のバルブは、本体が割れ、等の破壊をする前にふたとの接続部からの漏れが発生してし

   まうため、一般には、設計圧力の4耐圧試験を行い、異常の無いことを確認する。

  ③ 歪ゲージによる発生応力の測定

      3次元歪ゲージを用い、発生応力が許容応力以下であることを確認する。

  ④ 有限要素法

   3次元CADを用い、有限要素法により発生応力が許容応力以下であることを確認する。

                                                                                  以上