バルブの流量特性

バルブを通過する流れの圧力分布の概念図

一般に流体が絞り部を通過するときに流速が増加して、その分だけ静圧が減少する。絞り部のすぐ下流の縮流部では流れの断面積と静圧が最小になり、一方流速は最大となる。この縮流部より下流では逆に流速が徐々に小さくなり静圧が回復するが、流体の摩擦損失などのため元の圧力までは戻らない。管路にある調節弁及び継手についても同様であり、左図に示すように、回復できない圧力損失が発生する。

差圧と流量の関係(流体が液体の場合)

バルブに流体を流した場合、差圧を徐々に増加させていくと√Δpに比例して流量が増加する。しかし、差圧を増加し続けると流れの縮流部における圧力が低くなり、その圧力が流体の飽和蒸気圧力まで降下すると、液体が蒸発し始め気体が生じ液体とともに下流側に流れていく。しかし、その気泡が縮流部通過後、圧力回復によってすぐ崩壊する。この様な蒸気泡が形成される現象をキャビテーションと呼んでいる。

さらに、差圧を増加させバルブの出口圧力が液体の飽和蒸気圧力より低くなった場合、縮流部で発生した蒸気泡は流れの中に残ったまま、気液混相となって流れるようになる。この様な流れを閉そく乱流と呼ぶ。

                         (引用) JIS B 2005-1 工業用プロセス用調節弁

圧力損失と流量の関係式

流量特性線図

バルブの流量特性線図 { 弁開度(%)-流量(Cv値)(%) }

 

 

1.仕切弁

 a) 特性に近いが、バルブを絞って

  使用するほどキャビテーションが

  発生し易い。

 b) 中間開度(特に閉止近く)で長

  時間使用した場合、脈動によって

  弁体が振られダメージ 受け

  すくなる。

 

 

2.玉形弁

 a) 円すい形は、クイックオープン

  特性であり、シビアな制御には

  かない。一般的に手動使用

  される。

 b) プラグ形は、イコールパーセン

  ト特性に近い。さらに,Cv値を

  小さくし、制御範囲を広ニー

  ドル形がある。いずれも、主とし

  て工業用でシビアな制御に使用

  される。

 

 

3.ボール弁

 a) 弁開度0~80° 付近までは、

  イ ールパーセント特性に近い

  が、弁開 度20° 付近まで

  帯 (流量がほ んど流れない)

  であり、それ以降の 開度に対

  する流量の変化量が 微妙

  な流量調整に向かない。

 b) 自動制御弁で、ポート形状を工

  夫 し、イコールパーセント特性に

  近づ たものもある。

  

 

 

4.バタフライ弁

  a) 弁開度80°付近までいは、イコ

  ー ルパーセント特性に近いが、弁

  開度30° 以下で使用した場 合、

  キャビテーションが発生し易いため、

  使用条件に留意する必要がある。

    b) 呼び径50A以上の自動制御に

  使用されることが多い。

キャビテーション

ベルヌーイの定理

 

 

粘性のない流体(完全流体)で定常流(流れが時間とともに変化しない流れ)の仮定の基に、速度水頭(第1項)、位置水頭(第2項)及び圧力水頭(第3項)の和が一定であるとの定理。

キャビテーションとは

 流速が大きくなることによって圧力が下がり、液体が沸騰し、発生した気泡が崩壊するときに金属表面が破壊・摩耗される現象。

キャビテーション係数(Kc)

    Kc = (P1-Pv)/Δp

        P1 : 対象弁入口圧力(絶対圧力)                 

        Pv : 対象流体の入口温度における

            飽和蒸気圧力(絶対圧力)

        Δp : 常用差圧 

 

キャビテーションが発生するか否かは、調節弁内の各部の圧力・温度が把握できない限り断定できない。しかし、調節弁の構造から、通常はポート部での減圧が最も大きいこと、また発生する差圧の概略が予測されることで、代表として対象の調節弁でのキャビテーションの発生の可否の大まかな指標が提示されている。それは、キャビテーション係数と呼ばれ上式で定義されている。この指標は、発生するポート部差圧に対し、どの程度キャビテーション発生状態に至るまでの余裕を持っているかを示す指標といえる。

                           上図引用:水道協会雑誌Vol。53 No。3(594号) 

キャビテーション係数については、種々の文献に発表されているが、これらの値は同種のバルブであっても必ずしも同じではない。文献の値の一例を以下に示す。

     玉形弁:0.75 ボール弁(Std.Bore)0.25バタフライ弁(60°開):0.3

     -引用文献;ANSI/ISA-S 75.01:Standard-Control Valve Sizing Equations

 

キャビテーションによる事故例

 

 

 

    自動弁の上流側に仕切弁が設置されており、

    長期にわたり弁体を全閉近くまで絞って使用

    されていた。

 

 

 

     仕切弁二次側の流路内壁がキャビテーション

     の衝撃によりクレータ状になり、一部に穴が

     あいた。