輸出貿易管理令
1. 安全保障の観点からの輸出管理
北朝鮮の核実験やミサイル発射等にも見られるように大量破壊兵器や通常兵器の拡散は大きな国際問題となっている。こうした中で、我が国は、我が国の安全保障と国際的な平和及び安全の維持の観点から、大量破壊兵器や通常兵器の開発・製造等に関連する資機材並びに関連汎用品の輸出やこれらの関連技術の非居住者への提供について、外国為替及び外国貿易法(以下「外為法」(がいためほう)という。)に基づき、必要最小限の管理を実施されている。
したがって、外為法で規制されている貨物や技術を輸出(提供)しようとする場合は、原則として、経済産業大臣の許可を受け る必要がある。 外為法に基づく規制は、化学兵器禁止条約等の条約に基づくものと欧米先進諸国等が中心となって参加する国際的な輸出管理に関する合意(※国際輸出管理レジーム)等に基づき実施されている。
現在、我が国の安全保障輸出管理制度は、これらの国際合意等に基づき、主に①炭素繊維や数値制御工作機械などある一定以上のスペック・機能を持つ貨物(技術)を輸出(提供)しようとする場合に、原則として、経済産業大臣の許可が必要となる制度(以下「リスト規制」という。)と②リスト規制に該当しない貨物(技術)の貨物(技術)を輸出(提供)しようとする場合で、一定の要件(インフォーム要件又は客観要件)を満たした場合に、経済産業大臣の許可を必要とする制度(以下「キャッチオール規制」という。)の2つから成り立っている。
2. リスト規制
輸出令別表第1(外為令別表)の1の項から15の項に該当する貨物(技術)をリスト規制貨物(技術)とう。リスト規制は、専ら貨物や技術の機能や性能(スペック)に着目した規制である。具体的なスペックや機能は、輸出令別表第1(外為令別表)の1の項を除き、経済産業省令である「輸出貿易管理令別表第1及び外国為替令別表の規定に基づき貨物又は技術を定める省令」(以下「貨物等省令」という。)で規定されている。スペックを満たすリスト規制該当貨物(技術)を外国に輸出(提供)する場合は、原則、経済産業大臣の許可が必要となる。たとえば、東京にある会社が、アメリカにある子会社に輸出令別表第1の3の項(2)に該当するポンプ1セットを輸出する場合であっても、経済産業大臣の輸出許可が必要となる。逆に輸出令別表第1の3の項(2)に該当しないポンプをアメリカに輸出する場合は、輸出令第5条により税関にリスト規制に該当しないことを証明する書類等(非該当証明書、項目別対比表、パラメータシート等)を提出する必要がある。
(弁のリスト規制)
別表第1 項目別対比表:該非判定用
3-(2) 次に掲げる貨物であって、軍用の化学製剤の製造に用いられる装置又はその部分若しくは付属装置
であるもののうち経済産業令で定める仕様のもの
七 弁又はその部分品:呼び径が10A超の弁であって、内容物と接触する全ての部分が次の
いずれかに該当する材料で構成され、裏打ちされ、又は被覆されたもの
イ ニッケル又はニッケルの含有量が全重量の40パーセントを超える合金
ロ ニッケルの含有量が全重量の25パーセントを超えかつ、クロムの含有量が全重量
の20パーセントを超える合金
ハ ふっ素樹脂
ニ ガラス
ホ タンタル又はタンタル合金
ヘ チタン又はチタン合金
ト ジリコニウム又はジリコニウム合金
チ ニオブ又はニオブ合金
リ セラミックであって、次のいずれかに該当するもの
(一)炭化けい素の含有量が全重量の80パーセント以上のもの
(二)酸化アルミニウムの含有量が全重量の99.9パーセント以上のもの
(三)酸化ジルコニウム
七の二 前号に掲げるものの部分品であって次のいずれかに該当するもの
イ ケーシング
ロ ケーシングライナー
2. キャッチオール規制
リスト規制製品以外のものを取り扱う場合であっても、輸出しようとする貨物や提供しようとする技術が、大
量破壊兵器等の開発、製造、使用又は貯蔵もしくは通常兵器の開発、製造又は使用に用いられるおそれがある
ことを輸出者が知った場合、又は経済産業大臣から、許可申請をすべき旨の通知(インフォーム通知)を受け
た場合には、輸出又は提供に当たって経済産業大臣の許可が必要となる制度である。この制度は通称「キャッ
チオール規制」と呼ばれている。従って、貨物の輸出や技術の提供を行う際は、リスト規制とキャッチオール
規制の両方の観点から確認を行う必要がある。
キャッチオール規制は、「大量破壊兵器キャッチオール」と「通常兵器キャッチオール」の2種類からなり、
客観要件とインフォーム要件 の2つの要件により規制されている。この2つの要件のどちらかに該当する場
合には、許可申請が必要となる。